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知っておきたいビジネス英文メール術――同時通訳者 関谷英里子

2018年12月21日

ビジネス英文メールは簡潔でわかりやすいことが第一

メールは、ビジネスに欠かせないコミュニケーション手段。ただ、日本語のメールはすらすら書けても、英文メールとなると途端に手が止まってしまう…という人は多いのではないでしょうか。実は、その原因は、単語や文法知識の不足ではなく、単に書き方を知らないだけということも考えられます。

ビジネス英文メールを書く上で、押さえておくべきポイントを『関谷英里子のたった3文でOK!ビジネスパーソンの英文メール術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者であり、数々の一流講演家の同時通訳者として活躍する関谷英里子さんに伺いました。

伝えたいことを端的に伝える

――ビジネス英文メールを書く上で、基本となることは何でしょう。

関谷:「伝えたいことを端的に伝える」ことですね。英文メールというと難しそうに思えますが、後程ご説明する構成さえしっかり組み立てれば、難しい英単語も英文法もいりません。

英文メールを書くときは、「1通のメールにつき用件は1つ」「用件、つまり結論や言いたいことから先に書く」「用件ははっきりと、メールは簡潔に」「過剰な丁寧さ、過剰な謙遜は省く」という、4つのルールを意識するといいと思います。

――日本語のビジネスメールとは何が違うのでしょうか。

関谷:日本語のビジネスメールは、◯◯株式会社××事業部△△様と、長い宛先から入るのが普通で、続いて「お世話になっております」のような挨拶が入り、文末は「よろしくお願いいたします」などの言葉で結ぶ習慣が根付いています。

ところが、英文のビジネスメールは「Hi ◯◯,」と書き出し、前置きなしで用件を簡潔に書くのが一般的です。英語圏と日本では、ビジネスメールの書き方が違うんですね。

<英文ビジネスメールの例>

Hi Jane,(ジェーンさん)

Regarding the sales plan you sent me, I just wanted to check a few things.
(送っていただいた販売計画ですが、いくつか確認したい点があります)

Do you think you could meet me sometime tomorrow afternoon?
(明日の午後にミーティングはできますか)

Let me know if that works for you.
(ご都合を教えてください)

Best,

Makoto(マコト)

※『関谷英里子のたった3文でOK!ビジネスパーソンの英文メール術』より

「ビジネスなら依頼する、依頼されるのは当然」と割り切る

――前置きなしで用件から書いて大丈夫なのか、失礼にならないのか心配になってしまいます。

関谷:確かに、日本語のメールに慣れていると、「すぐに用件を切り出すと失礼にならないか?」と気を使いがちです。ですが、ビジネスメールは、基本的には「~してください」という相手への依頼ですよね。つまり、メールは依頼のし合いだと割り切ればいいかと思います。

日本語のメールでは、まず「いつもお世話になっております」などの一言を添えるのが思いやりですが、英文メールでは、仕事なので依頼を受けるのは当たり前、用件がはっきりした簡潔で読みやすいメールを送ることが思いやり、という感覚です。

――なるほど。日本語メールとは相手への気遣いの仕方が違うのですね。

関谷:そうですね。さらにやりがちなのが、日本語のメールに使われる表現を直訳して、過剰な丁寧表現、謙遜表現となってしまうことです。

例えば、「添付した所定のフォームに記載して返送してほしい」という場合、日本語メールでは「お手数をおかけして申し訳ありませんが~」などと前置きしますが、それを直訳して「We are very sorry~」と書いてしまうと、受け取ったほうは「謝るぐらいなら最初から送って来ないでよ」と感じてしまいます。「~していただけますと幸いです(It would be great if~)」と表現するといいですね。

――敬称の書き方が違うのも、意識の違いから来るものでしょうか。

関谷:日本は、上司と部下、先輩と後輩といった関係は不変で、常に丁寧に接するべきだという文化。対して欧米は、上司と部下、営業と取引先のあいだでも、フラットなコミュニケーションを良しとする文化です。

例えば、マイクという名前の上司がいたとして、初対面のときはまだお互いのことがわからないので、「Mr.」や「Ms.」といった敬称をつけますが、多くの場合、向こうから「Call me Mike.」などと言ってくれるので、2回目からはメールの書き出しも「Hi Mike,」で構いません。

上司と部下であろうと、お互いにリスペクトしつつ対等なビジネスパーソンとしてコンタクトをとるもの、という感覚なんですね。逆に、数ヵ月もやりとりしているのに、常に日本式の最上級の丁寧語を使っていると、「堅い人だな」といった印象を与えてしまうと思います。

――どうすれば自然に振る舞えますか?

関谷:日本人の場合、少しドキドキするぐらいにフラットな感じでいくとちょうどいいかと思います。コミュニケーションは相手ありきなので、相手のテンションに合わせるぐらいがいいですね。ただし、業界によっては、英文メールでも、堅いコミュニケーションをとる場合があるかもしれませんから、そのときは相手に合わせましょう。

「この表現は相手に失礼では…」と考える必要はあまりない

――英文メールの構成は、どう組み立てればいいでしょうか。

関谷:メールの目的から考えるとわかりやすいですね。例えば、何かミスをして謝罪のメールを送るとしても、謝罪のメールを送る目的は、謝罪そのものではありません。謝った上で、「それでどうするのか」という次のステップを伝えることが目的なので、「一番言いたいこと何なのか」「次に相手にどういう行動をとってほしいのか」をベースに組み立てるのがおすすめです。「いきなり本題に入る」といった構成でも、失礼にあたることはありません。

――自分の英語力でちゃんと伝わるのか不安になります。

関谷:多くの方が一番懸念されているのは、「自分の英語がつたなくて、失礼にあたったらどうしよう」ではないでしょうか。しかし実際のところ、英語でやりとりするときに「この表現が相手に対して失礼だったらどうしよう」と考えている人はほとんどいません。そこを考える必要はあまりなく、それよりも「なぜメールを送るのか」という、そもそもの目的を達成することを大事にするといいと思います。

――一つひとつの表現には、そこまでこだわらなくていいということでしょうか。

関谷:そうですね。もちろんまったく何でもいいわけではなく、「~を強く求める」という意味のdemandや「~すべき」のshouldのほか、命令文など、ビジネス上はほぼ使わない、使うと失礼になる書き方はあります。ただし、数は多くないので、最低限覚えておけば問題ありません。

一方、丁寧な依頼をするなら「We would appreciate it if you could~」、「残念ながら~できません」と伝えるなら「I'm afraid~」といった定番の表現方法もあるので、有効に使うといいですね。

英文メール上達の近道は人の表現をまねすること

――スマートフォンが全盛期になったことで、英文メールの書き方にも変化は出ているのでしょうか。

関谷:メールはより短文に、返信までの時間もどんどん短くなってきていると思います。

あと、これはスマートフォンが主流になったからというわけではないですが、返信が必要ないメールには、返信しないことがほとんどです。例えば、請求書や資料など、何か確認して行動を起こしてほしいメールを送ったとき、日本なら相手から「ありがとうございます。確認しました」という連絡があるかと思いますが、英文メールの場合、「確認しました」という返信は来ないのが普通です。

――ということは、自分が受け取ったとき、返信しなくても失礼にはならない?

関谷:ならないと思いますよ。受け取ったのが請求書なら、期日までにお金を送りさえすれば問題ありません。だから返事が来なくても、落ち込んだり、書き方がまずかったのかと心配したりしなくていいし、請求書は届きましたかと問い合わせる必要もないです。

――最後に、これから英文メールに挑戦しようという人は、どのように勉強すればいいでしょうか。

関谷:まずは、英語でメールを書く環境を作ることですね。仕事で海外と関わるのでも、ボランティアでも何でもいいので、まず日常的に英文メールを書く環境に身を置くといいと思います。
あとは、相手から返ってくるメールを見るなり、同僚やその相手からの返信を見せてもらうなりして、使える表現のストックを増やしていくといいですね。

関谷英里子(せきやえりこ)

アル・ゴア元アメリカ副大統領、ダライ・ラマ14世といった、国内外一流講演家の同時通訳者。日本通訳サービス代表。 NHKラジオ「入門ビジネス英語」の元講師で、数々のビジネス英語に関する書籍を執筆。現在は同時通訳のほかにも、アメリカ・シリコンバレーの戦略コンサルティングファームBlue Field Strategies社で事業開発担当。また、非営利組織Japan Society of Northern Californiaでは、理事として日本と海外をつなぐ活動に精を出す日々を送る。